既存SC前年同月比売上高伸長率 :+11.0% (参考・2019年同月比 : ▲18.0%)
前年の反動でプラスとなるも、オミクロン株の感染急拡大に伴い客数減
全体概況
- 1月度の既存SC売上高の前年同月比伸長率は総合で+11.0%となった。
- 前年に緊急事態宣言下で売上が大きく落ち込んだこともあり、1月は前年比でプラスとなったものの、コロナ前の2019年比では▲18.0%と厳しい結果となった。年始は2年振りに新春イベントや福袋販売といった販促施策を実施し、来館者増となったSCが多かったものの、1月9日に広島県、山口県、沖縄県でまん延防止等重点措置が発出され、21日、27日と段階的に対象範囲が34都道府県まで拡大されたこともあり、全国的に外出自粛傾向が強まったことから来館者数に大きな影響を受け、中旬以降は売上も総じてマイナス基調となった。
- テナントは、前年同月比伸長率+12.7%となった。前年に緊急事態宣言の影響が顕著であった飲食、理美容、アミューズメント、シネマなどで前半は回復傾向が見られた。ただし、まん延防止等重点措置による営業時間短縮等もあり、後半は再び厳しい状況となった。
- キーテナントは、前年同月比伸長率+4.7%となった。中心地域は同+21.4%、周辺地域は同+1.8%となった。中心地域は前年の落ち込みが▲33.4%と大きかった分、プラス幅が周辺地域を大幅に上回った。中心地域では、ラグジュアリーブランド、時計、宝飾品等の高額品が引き続き好調な百貨店がけん引した。一方、周辺地域では、売上構成比の高い食料品や日用品が堅調なSMやGMSがコロナ下でも比較的安定した売上を保っていることから、前年からの変動が少なかった。
[立地別]
- 中心地域・大都市は総合で前年同月比伸長率+20.4%となった。前年に緊急事態宣言の影響で▲41.6%と大きく落ち込んだ反動に加え、百貨店をキーテナントとした東京区部のSCの売上伸長が見られた。
- 中心地域・中都市は総合で前年同月比伸長率+11.8%となった。東北、北陸、中部などの中核都市では、2年振りに帰省客で賑わったSCが多く見られた。また、前年は1月7日に1都3県で緊急事態宣言が発出され、「出勤者7割削減」の呼びかけもなされたことからテレワークが増え、平日の仕事帰り等の購買機会が減少したが、本年は前年秋の宣言解除以降、出勤者の増加傾向が見られ、関東のベッドタウンと呼ばれる都市では駅立地のSC等で前年を大きく上回った。
- 周辺地域は総合で前年同月比伸長率+8.9%となった。テナントは+11.3%と大きく伸びたが、これは、前年1月の緊急事態宣言に伴う時短営業による飲食の苦戦や、衣料品、身の回り品等の不振による大幅減(▲23.1%)の反動があったと推察される。一方、キーテナントはコロナ下でも食品や日用雑貨などの巣ごもり需要が堅調であり、前年も1桁台のマイナスに踏みとどまったことから、+1.8%と微増となった。
[地域別]
- 前年は緊急事態宣言が発出された地域が多かったことから、反動増もあり全ての地域で前年を上回ったが、コロナ前の2019年比では厳しい状況が続いている。
- 関東は、総合で前年同月比伸長率+13.2%となった。特に、東京区部が+16.9%と高い伸長率となったが、これは緊急事態宣言下であった前年よりもオフィスワーカーの出社率が増加したことにより、オフィス街立地や繁華街立地のSCの多くが前年を大幅に上回った等の要因によるものである。
- 北陸は、総合で前年同月比伸長率+13.9%となった。特に、中心地域が+24.0%と伸長率が高かった。前年と比べると帰省客の賑わいが戻り、お土産や飲食を中心に売上を伸ばしたことが要因と言える。
- 近畿は、総合で前年同月比伸長率+6.1%となった。大阪市+12.3%、神戸市が+10.3%と牽引した。これは、前年の1月14日に関西3府県に緊急事態宣言が発出されたことなどにより売上が大きく落ち込んだ反動が主な要因と考えられる。大阪市は前年に▲38.2%と大幅にマイナスとなったが、本年は中心地域の繁華街立地や駅立地のSCを中心に前年を大きく上回った。神戸市はレジャー需要にも対応する広域大型SCが好調であった。
[業種別]
- 「ファッション」は、年始の外出機会の増加にともない、アクセサリー、靴、スーツなどの需要が増加した。年末からの気温低下により、冬物の売上を伸ばした。ラグジュアリーも年末に引き続き好調だった。ファッションは価格に関わらず、気に入れば購入する傾向があり、プロパー商品が売上を引き上げた。
- 「飲食」は、年始は年末からの好調が継続していたが、月後半にかけて感染者増により全国各地でまん延防止等重点措置がとられ、来客数減の傾向が見られた。特に宴会需要が減った居酒屋や喫茶の落ち込みが目立った。一方、テイクアウトを主としているテナントは好調であった。
- 「サービス」は、『劇場版 呪術廻戦0』などのお正月映画のヒットにより、「シネマ」が好調だった。