日本では少子高齢化、また近年では新型コロナウイルス感染症による影響等からも、依然として人手不足の状況が続いています。
当協会では、テナント企業の深刻な人手不足問題を受け、2017年に人材確保対策特別委員会を設置しました。人材確保対策の一環として、SC業界の人材確保に関する実態を把握する「SCの人材確保に関する定量調査」を2017年度より毎年行っており、この調査結果は会員各社の取り組みに生かしていただくとともに、ES向上・人材確保に関する月刊誌での特集やセミナー開催などにも生かしております。今年度は、従来の項目に加えて、コロナ禍で増加していると言われる「カスタマーハラスメント」について調査しました。
今回の結果から見えてきたSCのディベロッパーやテナントが抱えている課題について、当協会では会員企業の取り組みをサポートする取り組みを行ってまいりたいと考えております。
1.SCの人材確保に関する定量調査 概要(速報)
※2022年1月31日集計時点
調査期間:2021年12月1日~2022年1月11日
調査対象:第一種正会員(ディベロッパー)309社、第二種正会員(テナント)263社
回答
(1)ディベロッパー向け調査:回答数80社(144SC)、回答率26%
(2)テナント向け調査 :回答数46社、回答率17%
【調査結果概要(要旨)】
●テナント従業員の充足度が低下した企業が増えた。コロナ禍での休業・時短営業、事業の先行きの不透明感から新規採用を抑制した事等による、人材の離反が影響している可能性がある。コロナの感染状況により、今後も人手不足に大きく影響すると考えられる。
●テナント従業員の採用困難度について、とくに非正規社員は、約半数の企業が前年度より難しくなったと回答している。前述した人材の離反に加え、外国人の入国制限等の影響もあると考えられる。
●カスタマーハラスメントの発生状況は、コロナ禍をきっかけとして「増加した」と回答したテナント企業が約30%、ディベロッパー企業が約40%となり、テナントのみならずSC全体での増加が見られる。課題として、テナント企業の半数近くが判断基準や対応マニュアル・方針等の未整備を挙げており、社会問題化する一方で、企業としてはまだ手探りの状況である事がうかがえる。
(1)テナント従業員の充足度・採用困難度
③離職理由で該当するもの、あるいは考えられるもの(テナント企業回答)
(2)SCの営業時間・休日の変化
①営業時間の変化(ディベロッパー企業回答)
<2015 年 4 月以降の営業時間の変更有無>
※その他変更あり・・・営業時間は変えずに1時間早くスライド
②休業日数の変化(ディベロッパー企業回答)
<過去5年間の年間休業日数>
(3)カスタマーハラスメントについて ※2021年度追加項目
②カスタマーハラスメントの内容(テナント企業回答)
1 | 従業員の対応について | 59% |
2 | 商品について | 50% |
3 | 店舗の感染症予防対策について | 18% |
4 | 営業時間について | 2% |
5 | その他 | 0% |
③カスタマーハラスメント対応における課題(テナント企業回答)
1 | どのような行為がハラスメントとみなすか基準を示していない | 48% |
2 | 顧客からのハラスメントへの対応マニュアルがない | 43% |
3 | 顧客からのハラスメントに関する教育をしていない | 39% |
4 | 顧客からのハラスメントを許さないという方針を示していない | 36% |
5 | 被害にあった従業員に対するケアの体制がない | 25% |
6 | 顧客からのハラスメントについて検討する部署などがない | 23% |
7 | 店舗内に監視カメラを設置していない | 20% |
8 | 実態を把握していない | 16% |
9 | 相談窓口を設置していない、または相談対応者が決まっていない | 16% |
10 | 最寄りの警察等の連絡先を周知していない | 9% |
11 | 報告システム・ルールが確立していない | 7% |
12 | その他 | 2% |
④カスタマーハラスメントの発生状況(ディベロッパー企業回答)
⑤カスタマーハラスメントの内容(ディベロッパー企業回答)
1 | 共用部(休憩スペース)、設備(EV、空調など)、衛生面(コロナなど)について | 48% |
2 | テナントへのご意見について | 35% |
3 | イベントについて(イベント運営スタッフ含む) | 13% |
4 | DV運営スタッフの対応について | 4% |
5 | パートナー会社(警備、清掃、駐車場)の対応について | 0% |
⑥テナントへのご意見への対応(ディベロッパー企業回答)
1 | 施設担当者として、テナントスタッフの対応に同席 | 44% |
2 | その他 | 42% |
3 | 対応のため、施設の会議室(応接室)の利用貸出 | 14% |
<「その他」の主な内容>
・施設担当者としてお客様対応を行い、テナントへの周知・教育を行う
・不審者、悪質クレームについてはテナントへの注意喚起を行う
・全館へ共有し、改善状況を経過観察
・店長や本部と連携して対応
・原則テナントにて対応