近年、ディベロッパー(以下、DV)が主体となり、人材サービス会社と連携してテナントスタッフの採用活動を支援する事例が増えている。
今回は、そのような取り組みの先がけといえる「グランフロント大阪ショップ&レストラン」(以下、当SC)の事例について、阪急阪神ビルマネジメント(株)うめきた営業部の金部耕平氏に話を伺った。
―採用激戦地区での大量採用
阪急阪神ビルマネジメント(株)(以下、当社)は、大阪・梅田や阪急阪神沿線を中心に、オフィスやショッピングセンター(以下、SC)など約1000物件のビルマネジメントに関する事業を行っている。2013年4月、梅田駅北側にある約7ha(甲子園球場の約1・8倍)の敷地に「グランフロント大阪」がオープンした。当SCは建物の低層部に位置し、テナント数約260店舗、テナントスタッフ(以下、スタッフ)数約7000人、年間延べ来館者数約5200万人である。
当SCがある梅田は、関西随一の繁華街であり、商業施設も多く、競合の多いエリアである。
そのような環境下で、テナント単位で採用活動をしても注目度が低く、人材が集まりにくい状況であった。そこで当社主体でスタッフの採用支援を行うこととした。
―7000人規模のスタッフを確保するために
当社単体で採用支援を行ったSCもあったが、採用激戦地区で大量採用しなくてはならない状況下で、告知訴求力やサービスの拡充、求人コンテンツの制作において限界を感じ、人材サービス会社3社と手を組むこととした。そのなかから「合同面接会」「求人サイト」の取り組みについて紹介する。
■合同面接会
当時、出店テナントは「日本初」「関西初」「新業態」が多く、各テナントの認知度を高める必要があった。そこで人材サービス会社の(株)アイデム(以下、アイデム)と共同で合同面接会を開催した。
アイデムはすでに幅広い求職者層より支持を得ており、当SCおよびテナントが求める求人条件と合致した。合同面接会は2~3月に計3回実施(3日間の来場者数約3000人、約160テナントが参加)。多業種が参加していることもあり、求職者が直接複数の企業担当者と話し、自分にあった仕事を探すことができる環境をつくった。結果として、当SCのオープンまでに有用な人材を確保することができた。
■求人サイト構築
合同面接会と同じくアイデムと当SC公式サイト内に求人ページを開設し、テナントが無料で求人情報を掲載できる環境を構築した。その後、2015年5月にサイトをリニューアル。構成やデザインの変更だけでなく、SCや従業員設備の紹介、研修会・懇親会に関する情報のほか、「スタッフインタビュー」のコーナーを設け、実際に当SCで働く多業種のスタッフの声を掲載するなど、当SCで働く魅力を伝えるコンテンツを充実させた。
さらにリニューアルに合わせて、アイデムが運営する「イーアイデム」との連動も開始し、求人情報を拡散させた。とくに2015年は、近隣に「ルクア1100」が開業するなど競合環境が厳しさを増したが、外部求人サイトと連動したことで、公式サイト側の閲覧件数減少を補完し、現在でも円滑な求人活動につながっている。テナントからも「求職者の応募が多数来るようになった」「無料掲載であることでコストメリットが高い」などの評価を得ている。
また、月1回届くレポートをもとに閲覧数の増減、前年対比・時間帯別応募件数、各掲載テナントの応募状況、応募者の傾向を把握するなど効果検証もしっかり行っている。その結果をもとにテナントへのフォローも欠かさない。
―最後に
現在は阪急西宮ガーデンズ(西宮市)や阪急三番街(大阪市)でも同様の取り組みを広げており、全社をあげてテナントの人材確保を支援していく。
また、取り組みを通じて、このようなスタッフの採用支援策やハード改修はもちろん必要だが、「当SCで働きたい」と求職者に思ってもらうためには、日々のSC/テナント運営に対するお客様評価も重要な動機づけになると改めて感じた。
そのため、今後も当社として最大限の運営に注力し、人材確保が厳しい環境下でも、求職者が魅力を感じるSCにしていきたい。
*内容は全て掲載当時のものです。
SC JAPAN TODAY 2016年9月号掲載
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