日本ショッピングセンター協会(以下、SC協会)では5月に「SC業界テナント人材確保の取り組み」を公表した。これを受けて、本誌では各社の人材確保の取り組みを紹介していく。
第1回目は、㈱グルメ杵屋執行役員総務部門長の加藤誠久氏に話をうかがった。
――企業概要・従業員数
当社はうどんの「杵屋」、そばの「そじ坊」を中心に、全国のショッピングセンター(以下、SC)に438店(2016年3月末現在)を展開しています。うどん7業態、そば8業態、洋食6業態、丼・和食8業態、韓国・アジアほか5業態の合計34業態を有しています。社員数は約700人(正社員、嘱託)で、正社員の約90%が男性です。平均年齢は約39歳。パート・アルバイトは女性が約75%です。
――人材確保に関する課題
パート、アルバイトの流動性が非常に高く、入れ替わりが激しいのが課題です。そのため熟練者が入れ替わり、店舗の運営レベルがなかなか上がらないという悩みを抱えています。また、パート、アルバイトを募集しても集まらない地域があります。
東京都内では八王子や立川での募集はそれほど難しくないのですが、都心部や神奈川、千葉は非常に厳しい。関西では、神戸、京都、大阪の梅田や難波以外はそれほど厳しくありません。
その対策として、九州や北海道などで集中的に募集し、その際に東京や大阪、名古屋などに異動できる人を積極的に採用しています。ただ店舗間の異動は、最近は男性でも嫌がる傾向にあります。そのため人事制度を一部変更し、給料の上限は決まっているが異動がない職群を設けました。
――人材確保の取り組み
1つ目は、社員のモチベーションを上げるために、6年前から社員教育費を5倍以上に引き上げて取り組んでいます。具体的には、新入社員研修を1年間行っています。そこでは、ビジネスマナーや一般常識、経営理念、調理・店舗運営基礎知識、リーダーシップなどを学んでもらいます。これにより翌年の4月に店長就任を目指すとともに、最大の目的は将来の幹部候補の育成です。店長研修では、①各種調理研修②接客研修③数値研修④目標設定⑤パートナー採用・教育を中心に、幹部社員やパートナーも含め幅広く実施しています。
2つ目は、年度事業計画の営業予算よりも利益を確保した社員に手当てとして還元しています。
1カ月で最大20万〜30万円が給与にプラスされるという制度です。実際、店長のなかには給料のほかに年間200万円以上の報奨金を手にした者もいます。
人材というのは、企業の状態が悪い時ほどいてほしい人が辞めていくものですが、この制度によりそれが改善されました。
3つ目は、「グッジョブカード」でスタッフがお客様に評価されたとき、スタッフ同士で評価しあったときに、感謝の気持ちを込めて該当するスタッフにこのカードを渡すのです。
その枚数がポイントになり、数多く集めた人を表彰しています。
4つ目は、SC協会の接客ロールプレイングコンテスト全国大会に出場した場合、報奨金50万円を支給する制度をつくりました。これが刺激となり、スタッフはいっそう接客レベルの向上に取り組んでいます。
5つ目は、資格手当としてSC協会のSC接客マイスター制度を活用することにしました。
1〜3級のいずれかに認定された従業員(パートナー含む)に対して、認定証交付日の翌月から資格手当を支給します(金額検討中)。また、試験の受験料や認定料も会社で負担します。
――ディベロッパーへの要望
店長1人が社員という店舗も多いので、SCの休館日があると助かります。また効率のよい営業時間をテナントごとに認めていただけるとありがたい。
従業員入口の近くに従業員用の駐車場、駐輪場を設置したり、従業員駐車場が不足している場合は増やしてほしいと思います。車の免許を持たない人も増えていますので、従業員用バスの本数や乗り場を増やしてくださると満足度も上がるのではないでしょうか。
スタッフ向けのレクリエーションは内容を充実させて、活用しやすいものにしていただきたい。
具体的には、話題のアトラクションや興行などに割引料金で参加できるとか、友人や家族で参加しやすいアトラクションやイベントなどがあるとよいと思います。
休憩室の席数の増加、設備面の改善、託児所の開設なども効果的ではないでしょうか。
*内容は全て掲載当時のものです。
SC JAPAN TODAY 2016年7・8月合併号掲載
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