既存SC前年比 : +3.1% (参考・前々年比 : ▲19.6%)
【速報値】SC年間売上高(推計) :25兆7,262億円
(前年比+3.3%・消費税抜・全SCベース)
緊急事態宣言等の相次ぐ発出もあり、厳しい売上状況続いた
全体概況
- 2021年(暦年)の既存SC売上高(総合)は、大幅な売上減となった2020年比で+3.1%の伸長率となったものの、年間を通じて新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた。
各都道府県で相次いで発出された緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(以下、「宣言等」)による「休業」や「営業時間短縮」などの要請に真摯に従い、通常営業できる期間が限られたこともあり、コロナ下前の2019年比では▲19.6%となる厳しい売上状況が続いた。
テナントとキーテナントの売上をみると、テナントが前年比伸長率+3.7%、キーテナントが同+1.1%であり、前年に大きく落ち込んだテナントの反動増が目立った。 - 月別の動向をみると、宣言等が発出された1月(総合・前年同月比伸長率▲25.2%)と2月(▲13.4%)は11都府県がその対象となり、飲食の営業時間短縮要請もあり、特に中心地域・大都市のSC来客減が顕著となった。3月(+12.5%)は、コロナ影響が始まった前年同月の反動増もあり、宣言等は継続したものの前年比伸長率はプラスに転じた。
4月(+141.2%)、5月(+70.1%)は、コロナ感染拡大に伴う初の緊急事態宣言が発出され全国的に自主休業を行ったSCが多かった前年の反動が見られ、宣言下で営業継続可能となった生活必需品を中心に大幅なプラスの伸長率となった。一方、6月(▲9.1%)は、前年に解除された宣言等が本年は下旬まで継続されたため、飲食といった営業制限を受けた業種を中心に前年を下回った。
7月(+1.1%)に入り「デルタ株」が猛威をふるいはじめ、8月(▲11.6%)にその感染が急拡大したことにより、再び発出された宣言等が27日には33都道府県まで拡大されたこともあり、夏休みやお盆の観光・帰省客の大幅な減少、密回避の強化を目的とした入館制限の要請もあり、宣言等が解除される9月(▲9.0%)まで、SCの売上に大きなマイナス影響を受けることとなった。
9月末での緊急事態宣言等の全面解除を受け、10月(▲1.4%)には少しずつ来店客が戻り、11月(+1.3%)からはこれまで控えていた各種販促策を再開するSCが見られ、12月(+6.0%)には全国の感染者数の減少傾向も見られたことから、クリスマスや年末商戦に向けて売上が回復し、2019年比で1桁台のマイナスまで改善した。
[立地別]
- 中心地域・大都市は総合で前年比伸長率+2.1%と、他の立地と比較すると伸長率は最も低かった。「大都市」は、緊急事態宣言対象が大半を占めていること、来館手段として公共交通機関を主とするSCが多いことから、外出自粛による影響が大きく、厳しい状況が継続した。ただし、10月の宣言解除以降は広域からの来館者の回復傾向が見られ、多くのSCで前年を上回る売上となった。
- 中心地域・中都市は総合で前年比伸長率+4.4%と、大都市の2倍超の伸長率となった。10月の緊急事態宣言解除以降、少しずつオフィスに出社する人が戻ってきたためか、平日の仕事帰り等に自宅駅周辺のSCで生活必需品を買い足す消費行動がコロナ前に戻りつつあることが推測される。また、地方都市では観光客やビジネス客の来館の回復も見られた。
- 周辺地域は総合で前年比伸長率+3.2%となった。周辺地域はマイカー利用での来館客の割合が高く、緊急事態宣言下でも、食料品や日用品業種の構成比の高い地域密着型SCが堅調であった。また、10月の緊急事態宣言解除以降は、身近なお出かけ先としてレジャー需要にも対応する広域大型SCの回復も顕著であった。
[地域別]
- 前年に全ての地域で二桁台の大幅なマイナスとなった反動増もあり、東北と近畿をのぞく7地域で前年比プラスとなった。
- 東北は、総合で前年比伸長率▲0.7%となった。年初の日本海側を中心とした大雪の影響や、2月に福島県沖で発生した最大震度6強の地震の影響により、宮城県や福島県の一部SCが臨時休業したことなどがマイナス要因となった。
- 関東は、総合で前年比伸長率+5.7%と、全地域で最も高い伸長率となった。前年に特に落ち込みの大きかった中心地域では、10月の緊急事態宣言解除以降、テレワークから出社への切り替えにより、東京区部、横浜市を中心にオフィス立地や駅立地のSCで来館者の増加傾向が見られ、プラス基調となった。
- 中部は、総合で前年比伸長率+4.7%となった。前年に落ち込みの大きかった地方都市の中心地域に位置する駅ビルや地下街で、観光や出張で訪れる人の戻りがみられ、反動増で前年を大きく上回ったSCが多かった。
- 近畿は、総合で前年比伸長率▲2.2%となった。特に中心地域が▲5.7%と落ち込みが大きかった。大阪府と兵庫県において4月5日からまん延防止等重点措置により時短営業を行ったことに加え、大阪府では、4月からの緊急事態宣言で、営業継続ができる「生活必需品」の対象が食料品・医薬品等と、他自治体よりも厳しく限定されたことが大きな要因となった。また、大都市で最も苦戦した大阪市(▲6.9%)は、7~8月に主要百貨店でのクラスター発生の報道が為されたこと等による消費マインドの低下が見られたことも影響したと推察される。
[業種別]
- 「ファッション」は、長期に亘る緊急事態宣言等により外出自粛傾向が強まり、苦戦が続いた。在庫ロスの削減のため生産調整が行われたために欠品となり、販売機会を逃すということもマイナス要因としてあった。10月以降は、外出機会の回復に加えて、気温低下もあり、秋冬物商品に動きが見られた。また、プロパー商材、セール品に関わらず「いま必要なもの」を厳選して購入する傾向が強く見られた。
- 「飲食」は、緊急事態宣言等に伴う時短営業に加え、アルコールの提供が禁止された影響により、特にディナータイムの売上が大きいレストランで苦戦を強いられた。テレワーク浸透によるビジネス客の利用減も響いた。一方、テイクアウト需要の高まりでファストフードは好調であった。10月以降は、緊急事態宣言等の解除でアルコール提供が再開され、新型コロナウイルス感染者数の減少とワクチン接種率の高まりとともに、ディナータイムの客足に戻りが見られ始め、営業時間や人数制限などの規制緩和により、忘年会利用にも回復傾向が見られた。
- 「サービス」は、長時間の施術が必要となるリラクゼーションや理美容といったテナントの苦戦傾向が続いているものの、コロナ初期と比較すれば、感染対策を徹底していることが浸透し、その安心感からか、利用頻度が徐々に戻ってきたという声も聞かれた。また、「シネマ」「アミューズメント」は、マスク着用や一定距離の確保、換気といった感染防止策の徹底や会話が発生しないといった消費者の理解が深まっていることからか、前年に密回避の傾向で大きく落ち込んだシネマやアミューズメントへの客足の戻りが見られた。