既存SC前年同月比売上高伸長率 :+1.1% (参考・前々年同月比 : ▲16.3%)
変異ウイルス拡大の影響が出始め、コロナ前と比べ都市部の回復が鈍い
全体概況
- 7月の既存SC売上高の前年同月比伸長率は+1.1%となった。
- 6月後半から感染力の強いインド型変異ウイルス「デルタ株」による感染が急増し始め、通常期に売上が期待される夏のセールに盛り上がりが見られず、緊急事態宣言対象が東京都と沖縄県に限定されたものの、総合では前年を辛うじて上回るに留まった。
- 2019年7月との比較では▲16.3%となり、前月より7.2ポイント改善したものの、依然としてコロナ以前の水準には回復していない。
- テナント(前年同月比+1.2%)とキーテナント(同+0.7%)の比較では、テナントが0.5ポイント伸長率で上回っているが、2019年との比較では、テナントが▲18.3%、キーテナントが▲8.4%と、アパレルや飲食を中心としたテナントの苦戦が続いている。
[立地別]
- 「中心地域・総合」が前年同月比+3.8%(前々年同月比▲25.4%)、「周辺地域・総合」が同±0.0%(同▲11.9%) となった。
- 中心地域は前年に特に落ち込みの大きかった大都市の反動増により+4.3%となった。特に、大都市では時計や宝飾品等の高額品に動きがみられた百貨店がけん引したこともあり、キーテナントがテナントの伸長率を上回った。
- 周辺地域はデイリー利用の地元客の来館がコロナ下で堅調であり、総合では前年並みとなった。特に、キーテナントは2019年との比較でも▲4.7ポイントと、マイナス幅が他と比べて小さい。
[地域別]
- 北海道の苦戦が続いており、特に中心地域のマイナス幅が大きくなっている。これは、夏の観光シーズンにも関わらず、コロナ下で観光客が激減していることが影響していると考えられる。
- 東北は、前年7月から感染拡大の影響が出始め、特に中心地域の落ち込みが大きかった反動で、本年はプラスに転じたが、28日(水)に上陸した台風8号の影響で、閉店時間を早めたSCもある等マイナス要素も見られた。
- 関東は、東京都で12日(月)から緊急事態宣言が再発出されたほか、埼玉県、千葉県、神奈川県はまん延防止等重点措置の対象となっており、前年同月売上を上回ったものの、前々年と比べると中心地域が▲24.5%と、都市部の回復は未だ見られないことが分かる。特に、東京区部は▲25.3%であり、大阪市(▲27.6%)と並び大幅なマイナスとなっている。
- 中部は、前年落ち込みの大きかった中心地域の駅ビルや地下街で人の戻りがみられ、反動増で前年を大きく上回ったSCが多く、前年比10.1%となった。一方、周辺地域では、前年に比べて都市部への流動回復傾向が見られたこともあり、マイナスとなった。
- 近畿は、大阪府を除き12日(月)でまん延防止等重点措置が解除されたこともあり、前年を上回る結果となったが、前々年と比べると、中心地域が▲28.7%であり関東と同様に都市部の回復が鈍いことが分かる。
- 九州・沖縄は前年7月に豪雨災害の影響とコロナの影響が重なり、中心地域で30%超の落ち込みとなった反動増がみられた。
[業種別]
- 前年に密回避の傾向で大きく落ち込んだシネマやアミューズメントへの客足の戻りが見られ、好調という声がきかれた。マスク着用や一定距離の確保、換気といった感染防止策の徹底や会話が発生しないといった消費者の理解が深まっていることが推察される。
- ファッションは、気温が高めに推移し夏物に動きが見られたものの、セールの盛り上がりに欠け、不振という声が多かった。プロパー商材、セール品に関わらず「いま必要なもの」を厳選して購入する傾向が強く、セット率を大きく下げたテナントも多かった。