既存SC前年同月比売上高伸長率 :+29.9% (参考・2019年同月比 : ▲11.3%)
外出機会の増加、通常営業再開などで前年比大幅増
全体概況
- 5月度の既存SC売上の前年同月比伸長率は、総合で+29.9%と大幅に増加した。
- 前年同月は、東京都、京都府、大阪府、兵庫県の4都府県が月を通じて緊急事態宣言下にあったほか、全国的に大都市を中心にまん延防止等重点措置の発出により休業や時短営業の影響が大きかった。当年は全国的に行動制限が緩和され、外出機会が増加したことに加え、通常営業に戻したSCが多かったことで、来館者が増加し、売上増につながった。ゴールデンウィークには、帰省客や旅行客の姿も多く見られたという声が聞かれた。2019年5月と比較すると、▲11.3%とコロナ禍前の水準は下回っているものの、着実に売上が回復傾向にあることが見てとれる。
- テナントは、前年同月比伸長率+36.5%となった。業種別に見ると、ファッションは中国・上海のロックダウンの影響により、衣料品の在庫不足も見られたが、気温の上昇により夏物衣料の売行きが好調だった。飲食は緊急事態宣言・まん延防止等重点措置(以下、宣言等)の解除や新型コロナウイルス新規感染者の減少により、客数増加が見られた。
- キーテナントは、前年同月比伸長率+8.0%となった。ラグジュアリーブランドや宝飾品などの高額商品が好調な百貨店がけん引し、中心地域・大都市のキーテナントは+56.2%となった。一方、コロナ禍で地元客を集客していた中心地域・中都市や周辺地域のキーテナントは、大都市への流入により、1桁台のプラスにとどまった。
[立地別]
- 中心地域・大都市は総合で前年同月比伸長率+58.3%と大幅なプラスとなった。前年同月は大都市(東京区部含む)全てで宣言等が発出され、休業や営業時間短縮の影響が大きかったことから、テナント、キーテナントともに他の立地と比較して最も伸長率が高かった。
- 中心地域・中都市は総合で前年同月比伸長率+29.2%、周辺地域は総合で前年同月比伸長率+24.3%となった。3年振りの行動制限のないゴールデンウィークとなり、観光立地の都市などでは、県外からの帰省客や旅行客の来館が増加し、飲食や土産などが好調だった。一方、旅行や帰省を控えた前年のゴールデンウィーク期間中、地元客の来館が多かったスーパーを中心としたキーテナントは小幅な伸長率にとどまった。
[地域別]
- 月を通じて全都道府県で宣言等が解除され、全9地域で前年を上回った。
- 北海道は、総合で前年同月比伸長率+66.2%の大幅増となった。前年は5月9~15日がまん延防止等重点措置、5月16日以降は緊急事態宣言が発出され、売上が落ち込んだが、当年は制限緩和により売上が増加し、2019年比で▲17.3%まで回復した。
- 関東は、総合で前年同月比伸長率+21.4%となった。特に東京区部は+58.5%と高い伸長率となった。前年同月、東京区部は月を通じて4月25日から続く緊急事態宣言下にあり、多くのSCで生活必需品以外の売場を臨時休業したため、当年は前年同月比伸長率を大きく伸ばした。一方、東京周辺のさいたま市、千葉市、横浜市、川崎市は、前年は東京からの来館者の流入により落ち込みが小幅だったため、他の大都市と比較すると低い伸長率となった。
- 近畿は、総合で前年同月比伸長率+94.3%となった。前年同月、大阪府、京都府、兵庫県は4月25日以降、月を通じて緊急事態宣言下となり、売上が大きく落ち込んだが、当年は制限緩和により売上が大幅に増加し、2019年比▲10.9%まで回復した。3府県においては休業要請の対象から外れる生活必需品が食料品・医薬品等に限定されるなど他の自治体よりも厳しく、なかでも大阪市は月を通じて生活必需品売場以外が休業となったSCが多かったため、前年同月比伸長率+303.3%となった。京都市と神戸市は5月11日まで生活必需品売場以外は全日休業、12日以降は平日は全館時短営業、土日は生活必需品売場以外休業となっていたため、大阪市と比較して増減率が小さかった。
[業種別]
- ファッションは、中国・上海のロックダウンの影響により衣料品の在庫不足が見られたものの、気温の上昇により、夏物が本格的に稼働したことで好調だった。
- 3年振りに行動制限のないゴールデンウィークをむかえ、アミューズメントやシネマが好調という声が聞かれた。帰省客、観光客の増加により、土産品も好調であった。一方、外出機会の増加により、前年は巣ごもり需要で好調だった生鮮食品や書籍、ゲームの売上が伸び悩んだ。
- 飲食は、制限解除に加えて、新型コロナウイルス新規感染者の減少傾向により、グループ利用も散見され、宴会需要の回復傾向が見られた。