謹んで新年のお慶びを申し上げます。
2022年は、新型コロナウイルスの感染防止対策への知見が深まる一方、経済活動との両立を目指す政府方針が示されたこともあり、外出先で久しぶりに友人たちと出会い、楽しい時間を過ごす人々の姿を見る機会が増え、改めてリアルの価値とリアルな場を持つSCの強みを感じた1年でした。コロナ禍においては、巣ごもり消費や在宅勤務などに代表される消費行動や生活様式などにより人々の価値観に大きな変容がもたらされました。このような中で、2023年のSCは、リアルの場、様々な出会いの場という強みを生かして、お客様の生活をより豊かにする存在に進化していく必要があります。これらを踏まえたうえで、SCが2023年に取り組むべき課題は以下の3点だと私は考えています。
1つ目は、「リアルな場を持つ強みを生かし、お客様の生活の質を高める存在へと進化すること」です。コロナ禍では、生活必需品に対するニーズが高まり、その利便性も相まってECの売上げが伸長しました。SCにおいても「今すぐ必要なもの」のみを購入し、短時間で帰宅するお客様が多く見られました。長らくコロナ禍での生活を経験したお客様は「新たな出会い」や「思いがけない体験」といった、単なる購買行動に留まらない経験を求める気持ちを強めていると感じます。
SCは、リアルな場を持つ強みを生かし、「日々の生活に彩りと潤いを与え、その質の向上に貢献する」存在へとさらに進化していくことが求められていると考えています。
2つ目は、SCがお客様の「日々の暮らしを支える、真の社会インフラへ進化すること」です。地域の社会インフラとしての使命を持つSCは、長年にわたり防災機能の強化に取り組んできました。加えて、新型コロナウイルスの発生以後は、徹底した感染対策を講じ安全・安心な利用環境を整えるとともに、ワクチン接種会場の提供などにも取り組みました。さらに、SCが真の社会インフラへと進化するために、購買目的の有無に関わらずSCで時間を過ごしていただけるような環境や、きっかけづくりが求められているのではないでしょうか。
3つ目は、「従業員が生き生きと働ける、魅力ある職場へと進化すること」です。SCにおいては、コロナ禍で一旦は落ち着きを見せた人手不足の課題が経済活動の再開とともに顕在化してきています。加えて、SCの多機能化や地域との連携強化が進む中で、多様な関係者と協業し新商品や新サービスを創出できる人材の必要性も増してきています。これは喫緊の課題です。「SCで働きたい」と感じられる職場へと進化するために、従業員が生き生きと働ける職場づくりが求められています。
さて、新年恒例の「SCビジネスフェア2023」は、多くの方々の英知の結集により、今後のSCのあり方について有益な示唆が得られる場となることを期待しています。当協会は、諸先輩はじめ多くの方々のお支えにより、本年、創立50周年を迎えることができます。そして、次の新たな50年を創造すべく、「人材育成」「情報の収集・発信」「研鑽・交流の促進」を事業の柱に、変化に挑むSC業界を全力で支援して参ります。
一般社団法人日本ショッピングセンター協会 会長 清野 智
(東日本旅客鉄道株式会社 顧問)