謹んで新年のお慶びを申し上げます。
2020年は、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、予期せぬ事態に見舞われた1年となりました。世界中の人々が楽しみにしていた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が延期となり、4月から5月には緊急事態宣言が発出され、人の移動や活動が強く制限されました。
そうしたなか、ショッピングセンター(以下、SC)は、感染拡大を抑えるために3月下旬から緊急事態宣言が解除される5月まで、休業等の営業制限を余儀なくされたものの、スーパーマーケットやドラッグストアなどについては営業を続けることができ、地域のライフラインを支えました。緊急事態宣言の解除後には、ディベロッパーとテナントが協力し、マスクの着用や消毒液の設置、3密を回避するソーシャルディスタンスの確保など徹底した感染防止策を講じ、安全・安心な館内環境を維持して営業を続けてきております。
新型コロナウイルスは、業界や企業が抱えていた課題を一気に浮き彫りにしました。私たちはこれを契機にこれまでのあり方に拘泥することなく、各々のSCがお客様に対して特色ある付加価値を提供するとともに、地域のさまざまな社会問題に向き合い、SC同士、ディベロッパーとテナント同士が互いに切磋琢磨して成長してまいりたいと考えます。
今年2021年、SCが取り組むべき課題は、以下の3点です。
1つ目は、リアルとネットの融合です。これまでリアル施設としてのSCは、マーケットニーズに合致した商品展開やお客様に寄り添う接遇サービス、快適な商空間の演出を通じ、お客様に買い物の楽しさを提供してまいりました。一方、新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、日本はもちろん世界中でネットショッピングや宅配サービスが大きく成長してきました。私たちリアルのSCにおいても、最近はネットを積極的に活用してきていますが、今後はそれ以上にリアルとネットを融合したシームレスなサービスを提供するなど、お客様の立場に立った新たな付加価値の創造に取り組んでいかなければなりません。
2つ目は、SC運営における業務の効率化です。SC内の申請手続きやテナントスタッフ研修のオンライン化など、デジタル技術を活用した生産性向上の取り組みが求められています。これは、テナントスタッフの恒常的な人手不足に対応しつつ、営業時間の合理化などSCにおける働き方改革にもつながる取り組みです。
3つ目は、ビジネスを通じて社会課題の解決に寄与するSC運営です。地域の雇用創出やコミュニティの醸成、有事の際には地域の防災拠点となるなど、暮らしやすい街づくりに貢献しつつ、子育て世代やお年寄り、障がい者、外国人など、誰もが安心して利用できる施設にすることが重要です。
さらに、再生可能エネルギーの活用や、過剰生産およびフードロスへの対応といった環境対策は、SC業界が取り組むべき喫緊の課題です。他の流通団体とも連携して、SDGsの取り組みを推進してまいりたいと思います。
新年のSCビジネスフェア2021オンラインでは、多くの方々の英知が集結し、今後のSCのあり方について有益な示唆が得られる場となることを期待しています。
協会は2023年に設立50周年を迎えます。次の新たな50年を創造すべく、本年も既存事業のブラッシュアップに取り組むとともに、会員企業の発展に資する新たな取り組みに着手し、業界の発展につなげてまいる所存です。
本年も協会活動への格別のご理解、さらなるご協力をお願いいたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。
一般社団法人日本ショッピングセンター協会 会長 清野 智
(東日本旅客鉄道株式会社 顧問)