既存SC前年同月比売上高伸長率 :+1.3% (参考・前々年同月比 : ▲9.3%)
新型コロナウイルス感染者数の減少で客足の戻りが進み、4ヵ月振りにプラス
全体概況
- 11月度の既存SC売上高の前年同月比伸長率は総合で+1.3%と、7月以来4カ月振りに前年を上回った。
- 前年同月よりも日曜日が1日少なかったものの、緊急事態宣言等の解除により客足の戻りが見られた10月からさらに回復傾向が見られ、前月を2.7ポイント上回った。
- テナントは前年同月比伸長率+1.5%と前月から3.3ポイント改善し、プラスに転じた。中旬以降の気温の低下もあり、冬物衣料や靴、雑貨などの動きが本格化した。また、飲食はディナータイムの売上が回復し始めた。
- キーテナントは前月並みの前年同月比伸長率+0.5%と堅調に推移した。百貨店では外出機会が回復していることもあり、婦人服や服飾雑貨が好調であることに加え、宝飾品や美術品等の高額品も引き続き堅調であった。一方、これまでコロナ下で売上を伸ばした地域密着型の中小型SCのキーテナントでは、外出範囲の拡大に伴い、前年を割る食品スーパーも見られた。
[立地別]
- 中心地域・大都市は総合で前年同月比伸長率+5.8%となった。飲食店の営業時間短縮要請等が解除されたことにより、繁華街に立地するSCの来館者数が増加し、売上増につながった。一方、未だ20時以降の集客や売上が伸び悩んでいるという声も聞かれ、2019年比では同▲16.9%と厳しい状況は続いている。
- 中心地域・中都市は総合で前年同月比伸長率+2.3%となった。キーテナントは同+6.9%となり、2019年比でも+0.5%とコロナ下前の水準まで回復した。婦人服・服飾雑貨が好調な百貨店が全体を押し上げた。
- 周辺地域は総合で前年同月比伸長率▲0.0%となった。テナント同▲0.0%、キーテナント同▲0.2%といずれも前年並みとなった。手近なレジャー需要に対応した広域商圏型SCは10月に引き続き堅調であった一方、コロナ下で地元客を集めていた地域密着型SCでは中心地域のSCへの流出が見られた。
[地域別]
- 総合では、北陸と四国を除く7地域で前年を上回った。
- 北海道は、前年に大きく落ち込んだ反動もあり、総合では前年同月比伸長率+23.6%と前年を大幅に上回ったが、2019年比でみると、▲17.6%と全9地域で最もマイナス幅は大きく、依然として厳しい状況は続いている。
- 東北は、総合で前年同月比伸長率は+2.9%となった。新型コロナウイルス感染者数の減に伴い、主に中心地域のSCで、平日のビジネス客や休日の観光客のご利用が目立った。特に、20~23日には4連休を取り、首都圏方面から観光で訪れる方で賑わい、商品が品薄になる土産物店も見受けられた。
- 関東は、総合では前年同月比伸長率+1.0%と僅かに前年を上回った。立地別で見ると、中心地域が同+3.5%、周辺地域が同▲0.2%となった。特に東京区部の繁華街やオフィス立地のSCで来館者に増加傾向が見られ、中心地域のプラスに寄与した。一方、周辺地域は徐々に中心地域へ人の流れが戻ってきたことが影響し、わずかに前年を下回った。特に、横浜市のキーテナントは郊外SCの食品スーパーが苦戦し、同▲10.0%と前年を大きく下回った。
- 近畿は、総合で前年同月比伸長率+0.5%となった。立地別で見ると、中心地域が同+4.8%、周辺地域が同▲0.7%であり、関東と同様の傾向が見られた。大都市では、大阪市(前年同月比伸長率+2.7%)と神戸市(同+5.0%)の繁華街やオフィス立地のSCに回復が顕著である一方、京都市は総合で同▲2.3%となった。これは、紅葉シーズンにGoToキャンペーンで売上を伸ばした前年の反動によるものである。
- 北陸は総合で前年同月比伸長率▲1.2%、四国は総合で同▲2.5%と前年を下回った。両地域とも、テナント退店による空床が見られたことが売上減の一因となったSCが見られた。また、四国では、外出自粛要請を続けた自治体もあり、前年売上を大きく下回ったことも要因となった。
[業種別]
- 「ファッション」は、外出機会の回復に月後半からの気温低下が重なり、冬物商品への需要が高まり、衣料、靴、バッグなどが好調であった。また、出張や観光に戻りが見られ、地方都市のSCでは「土産物」に動きが見られた。
- 「飲食」は、10月以降、緊急事態宣言等の解除で酒類提供が再開され、新型コロナウイルス感染者数の減少とワクチン接種率の高まりとともに、ディナータイムの客足に戻りが見られ始めた。